農業をはじめようと考えている方へ

新規就農に関して、40歳で就農した自分の経験談

自分の経験や考えたことを紹介することで、農業を始めようと検討されている方の少しでも参考になればと思います。

農業に従事されている方には、色々な考え方があると思いますし、いろいろな方法があると思います。
しかし、良い方法で栽培されている他の農家の事はほとんど知ることができません。
また、その内容を教えてもらえる機会はほとんどありません。
自分は5年前に、農業をやろうと考え検討を始めましたが資料が少なく本当に困った経験があります。
5年前の鈴鹿市の農業普及所は、資金のことを説明するだけで何の役にも立ちませんでした。(聞いた担当が悪かったのか・・・・最近はかなりよくなったようですが)

そこで、図書館に通い農業に関する本(栽培方法、土壌菌、輪作、資材など)をあるだけ目を通しました。
最初、理解できたのは栽培方法など簡単なことだけでしたが、栽培を始めて1年後ぐらいからいろいろと気づいたときに読み返してみて少しずつ理解できるようになりました。
非常に大切なことが、最初は見落としているんですが、まず読んでおくことが大切です。

農業で、食べていける?

自分のやっている栽培の内容で考えた場合は、かなり厳しい状況です。
40歳で農業を始めた自分の場合、子供を育てていく費用を考えると大変です。ほんと・・・・
さらに、設備を購入するのに借金しなければならない場合は、より厳しくなります。
自分の場合は、最初の3年間は時給にしたら200~300円ぐらい?かな
4年目からすこしメドがたってきだしました。
2年間は、収入がないつもりでいたほうが良いと思います。
最初から、儲けようと考えてムリすると、しっかり見ることもできなくて仕事に追われ、失敗も大きくなり嫌になる可能性が高くなると思います。
最初の2年間は、学校に行って勉強しているつもりになれば無収入でもいいのでは。
ムリをしないで、いろいろと実験してみると本当にいい勉強になりました。

こんな内容でも、検討したいと考えられる方は、メールでお問い合わせください。簡単にですが、質問にお答えさせていただきます。
自分が考えるには、子供が自立してからの50歳以降(早期退職)しての農業は、好きであれば面白いと思います

農業を始める場合の手順

1.まず地域の農業普及センターに相談
2.図書館で本を調べる
3.インターネットで徹底的に調べる
4.HPを持っている農家に問い合わせる。見学に行く。
5.作る野菜を決めて採算計画を練る
6.採算計画にあう販売先を考える
7.無理がないか考える
8.無理な計画でないか相談する
9.資金計画
こんな順序と思います。

自分の考える農業の今後

政府は、農業の大型化を進めています。担い手に補助金を集中する方針であるらしい。

本当に、大型化することが輸入に対する対策なのでしょうか?
日本が大型化してもアメリカの規模の何十分の1以下・・・コンバインの隣で10トントラックが走りながら収穫しているアメリカに対抗できるのでしょうか?
大型化していく反面、面積の小さい田んぼは、捨てられはじめて、荒廃が始まっています。
食料自給率40%以下の現在、海外から買い付けて飽食の日本ですが・・・大丈夫?

中国の脅威
中国は日本の10倍の人口がいます。食料輸出国から輸入国にかわりはじめました。
100%から90%になれば、日本の食糧分と同じ量の不足になります。
ここ、数年の中国の成長を考えると、本当の今後も日本に食料が入ってくるのでしょうか?

日本は小さい田んぼをすてるべきでない
上記を考えても耕作地の荒廃は大問題である。
小さい耕作地活かす方法を考えるべきではないでしょうか?
小さい面積でも生活できる方法はないか?自分は、それを考えて農業をしています。

5年前に、農業を始めるとき「10年後には、食料難になる可能性がある」と考えました。
5年たった今、あと5年で食料難になる可能性は?ですが・・・今から10年先は・・・・・・・どう考えられますか?

今は、生活できるように収穫量より売れる野菜を考えてつくってますが、同時に成育の早い野菜、大きくなる野菜、栄養価の高い野菜を考えてます。
輸入ができなくなったときに、少しでも多く供給できるように。「日本の食を担う農業です」

価格についての考え方

野菜の適正価格について

野菜の値段はどのように決まるのでしょうか?
一般的には、市場での需要と供給量です。私は、必要経費を計算した金額をもとに決めています。

最近の小売店主導の価格の決まり方

昔は、市場に入ってくる野菜を仲買が「せり」で買っていました。
だから、入荷が少なく買い手が多いと高い価格がつき、逆だと安くなりました。

最近は、小売店がチラシの計画をつくり競合店より少しでも安く仕入れるように仲買に注文します。
仲買は、市場を通して大産地の農協と販売数と価格をきめ、せりをせずに購入します。この価格が農家が食べていける価格なら問題ないんです。
でも、最近は100円均一からはじまり、どんどん価格が下がり適正価格を大きく下回ることが常です。
消費者にとっては、安いにこしたことはなく良いことですが、この価格では農家は食べていけなくなり、農家は廃業します。今、廃業する農家がかなり多いです。

日本はいま、食品自給率40%以下の状況です。そして農家が廃業してます。
米あまり対策の減反で狭い田んぼは切り捨てられはじめています。

10年先、20年先も海外から食料は、入ってくるのでしょうか。
高度成長中の中国の人口は日本の10倍以上で、その中国が食料輸出国から食料輸入国に変わろうとしています。食料は、入ってくるのでしょうか?

適正価格での販売は、将来の日本の食料を守ることになると考えてます。

必要な経費から計算した適正価格

森田農園のほうれん草を1袋つくる場合

原材料費(種・肥料・育苗土・堆肥・土壌改良材など、販売用袋など)
内容量をできた袋で割って計算すると、1袋あたり約11円
設備費(ハウス・井戸・倉庫・配達用車・保管用冷蔵庫・トラクターなど)
その他(電気・ガソリン・消耗品など)
原価償却費などを年間の数量で計算すると 1袋あたり約42円
人件費(種まき・定植・水撒き・収穫・掃除袋入れなど)
それぞれにかかった時間をできた袋数で計算すると
収穫後の掃除、袋入れの費用:1袋あたり約37円
それ以外の作業にかかる費用:1袋あたり約15円
*人件費は時給750円で計算
*掃除・袋入れに時間がかかるのは、無農薬で作っているので虫の確認や虫食い葉の掃除を注意深くしているためで、普通の農家は、半分ぐらいですんでいる可能性はあります。

上記の経費を合計すると 製造原価になります:1袋あたり約105円

そこに、営業費用や配達費用がかかります:1袋あたり約8円
*農協出荷の農家は必要ありませんが、かわりに手数料がそれ以上にかかってきます

この金額は、農家がおとうさんも時給750円で働いた金額なんです。
学校を卒業したばかりの新入社員でも、年収300万円で時給1500円です。
農家も、最低限の生活をするための利益が必要です。

1日に200袋を、1年休まずに作ったとして73000袋
1袋、20円の利益とした場合、年間146万円+時給750×労働時間が農家の親父の収入になります。労働時間は1日平均10時間なので年間約3500時間で年収409万円 時給1167円(時給は低いですが)
この金額なら子供がいても農業を続けられます。。
この場合の1袋の価格は、133円となります。(農家渡し)
さらに、台風などの被害、天候不順や病気による被害などに対する保留分を加えると平均でだいたい150円が希望価格となります。
販売店で売られる価格は、ここに小売店の利益が加わります。

ただし、市場の相場の価格と極端に金額が違う場合には、利益を少なくして販売価格を調整する場合もかなりあります。
逆に、相場が高騰した場合は、多少は利益を多くしますが、健康に良い野菜をなるべく多く食べていただけるように極端に高い価格には、設定してません。
そのため、朝採りの新鮮な無農薬の野菜ですが普通の野菜より安くなる場合もでてきます。

無農薬・無化学肥料の野菜の価格比較

無農薬・無化学肥料で栽培している野菜なのにあまり価格が高くない理由について。
一般的な価格とうちの価格の比較についてです。

小売店の販売価格の推測

有機栽培の野菜や特別栽培(農薬・化学肥料を50%以上削減)の野菜は小売店では、一般の野菜に比べてかなり高く売られている事が多いです。
なぜでしょう?
1.無農薬でつくろうとすると、病気や害虫で収量が少なくなるため農家の単価が高くなるため。しかし、農家の手取りとしては、あまり高くはなりません。
2.特殊な野菜のため、流通に多くの業者を経由するため、中間の経費が高くなる場合。
3.小売店の販売において、単価が高いためロスが多くなり、値入が高くなる場合。
など、
実際には、農家の手取りはあまり高くなくても小売価格はかなり高くなっている場合が多いです。

もりた農園の価格の理由

上記に記載したように経費から計算した価格が、うちの価格になります。
無農薬栽培により作物の被害が多い場合は、その分高くなりますが、うちでは無農薬・無化学肥料で栽培していても、一般の栽培と比べて収穫量がそれほど落ちないので、経費から計算した価格が基本になります。

ただ、無農薬栽培でも被害を少なくするためには、それなりの工夫が必要になります。また、適時に対策をとることが必要になります。それをすることで大きな減収を逃れています。(今のところ、うまくできてます)

それと、直接販売や直接納品いう販売形態をとることにより途中に業者がはいらないことで価格が高くならないようにしています。

農業を始める前(勉強)と栽培を始めるにあたっての考え方と実践

野菜の栽培を開始した平成11年11月までの数ヶ月間にした事

まず最初に図書館で農業に関する本の手当たりに読みました。
そこで、農薬の危険性(使用している農家が危険)を感じて、無農薬での栽培を考えました。
また、興味を持って読んだ本の1冊の著者に電話をかけたところ関の農家(若林農園さん)を紹介していただき、約半年間、手伝いをしながら勉強させていただきました。
このときに、若林さんが取り組み始められていたのが、小松菜の移植栽培です。
自分はこのときの経験をもとに、より簡単に作業ができロスの少ない収獲ができないかを工夫したのが、床置きポット栽培です。

初めての農業で、ほとんど行われていない移植栽培の取り組む事は冒険でしたが、当日の朝収穫して10時に店に納品するためにはこの方法しかないと考え、取り組みました。
自分が農業をするにあたり、もっとも重要と考えたことは鮮度です。
輸入野菜が増加する現在、まねのできないのは鮮度(収獲から販売まで数時間でできるのは、近い(地産地消)だから。
当然、安全性・美味しさ・品質も負けないようにしての上での事です。

ほうれん草・小松菜は、朝はシャキッとしていて、触るだけで折れます。
早朝にそんな状態の野菜を収獲しようとするとき、ポットが有効になります。ポットを持って収獲すると簡単に折れが少なく、採れるんです。
また、ポットの高さがあるので水跳ねが当たりにくく、汚れが少ないんです。だから、水洗いせずに袋に入れても汚れの少ない状態で出荷できます。朝、自分で吸い上げた水でのみで、水洗いで余分な水分を与えませんので味も日持ちも良いようです。(葉野菜は水分が蒸発しやすいく、それがしおれになる)

トマト・オクラなど夏野菜も同じく鮮度一番の考えで、早朝収獲、すぐに配達に行っています。
ほうれん草と小松菜はもちろん、トマト・オクラも収獲してから2日間を販売期間と考えています。冬季(凍結する時期)は、一部前日夕方に収獲するため、3日間になりますが。
この決め事を実践するために、買取ではなく委託販売で売っていたいてます。(売れ残りは回収してきて、うちで食べます)
最近は、嬉しいことにほとんど回収はありません。(作付けする収穫量の予想がかなり正確になったかな・・)。

ほうれん草や小松菜は、収獲後、風や日差しに当てず、いかに早く鮮度保持袋に入れるかが重要です。
葉からの水分の蒸発が早く、鮮度が落ちやすいので、大変です。水につければ表面上は鮮度が戻りますが、実は違うと思ってます。

三重県鈴鹿市安塚町にある森田農園のハウス
52mと54mの2連棟のハウス、奥に40mと44mのハウスがあります